井の頭自然文化園

井の頭公園というのは一帯の総称のようで、動物園があるところは井の頭自然文化園と呼ぶようです。

さて、おそらく10数年ぶりくらいでこの自然文化園に入園してみました。
入園料は400円。私の少年時代、小学生は10円程度だった記憶があります。都立ですからまだこの程度の料金で済んでいるのでしょう。民営であればもっと高いか、そもそもこうしたコンセプトで経営していけるのかといった問題もあるかと思います。

園内は昔と変わらないですね。小さな変化くらいと見受けました。動物小屋の配置などは昔と同じだと思います。
ところが彫刻館の存在をまるで忘れていました。今回はこれが大きな収穫でした。
長崎の原爆平和像をつくられた武蔵野市の名誉市民・北村西望さんの作品が数多くここには残されていたのでした。彫刻作品を見るなり昔の記憶が甦ってきました。
作品は彫刻館の中だけでなく屋外にも置かれ、晩秋の柔らかい光と相俟って遠い記憶と重なります。

吉祥寺や井の頭公園に惹かれるのは、そこに在りし日の家族や友人たちの姿が目に浮かぶということが大きいでしょう。
幼児期のアルバムを飾る写真の多くがここを舞台としており、いまや取り戻すことのできない家族の原点を思い起こさせる舞台なのだと思います。
まだ若かりし頃の亡母。また友人では今春亡くなったY君の姿。そして少年時代の自分。
あたかもその時代に戻ったかのような不思議な感覚です。
センチメンタル以外の何物でもないのですが、私にとっては往時の記憶を手繰ることのできる場として惹かれるものがあるのだと思います。

ところでそうしたことは兄弟にも共通のようで、少し前に突然思い立って母校の小学校を兄とともに訪れたのでした。
私らが学んだ校舎は既になく、記憶と一致したのは職員室近くにあったヒマラヤスギだけでした。
少年時代の目線の高さと異なり、何と道の狭いこと。
記憶をたぐり寄せるために、2人とも少しかがんで周囲を眺めたのでした。
何年かして自然に腰が曲がるような年齢になれば、少年時代の目線が取り戻せるかもしれません。

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